パンコール島の病院での治療もむなしく、両手足に出来た謎の赤い斑点と水疱群は
その勢力を拡大してゆく。病院で貰った抗ヒスタミン剤は「これって、ただのビタミン剤?」と
疑うのに十分値するほど効かず、痒みと痛みに気が狂いそうになる。
ちゃんとした病院で治療しよー。−
と、K.Lに戻って来たはいいが、もはや英語やマレー語を喋る気力も失せ、
日本語の通じる病院を探して四苦八苦。
この章では、K.Lで行った"日本語の通じる病院"をかいつまんで紹介します。

●パンタイ・メディカル・センター
バンサー駅から徒歩約10分のところにあるデカイ病院。
俺の行った時、皮膚科は既に診察終了らしく、俺が通されたのは内科。
「トミョーカサン、ドーゾ。」と愛想もクソもない中華系女性看護婦おばちゃんとは対照的に
まるで大阪商人のような満面の笑みで迎えてくれるDr.ラウは初老の中華系ドクター。
俺の両手足に出来た赤い斑点と水疱を見るやいなや、
「ハハーン。ニジカンセンネー。ヒドイネー。」と、
 何が原因の二次感染かも説明してくれないのがちょっぴり怖い。
塗り薬のキャップの部分に丁寧に日本語で薬の説明を書いてくれる親切には感服するが、
「化膿止め」を「加ノウ止メ」と書いてしまうお茶目っぷりも。
しかし、「可能を止める薬」、すなわち「なんとなく不可能そーな薬」を連想させ、
この事が俺に病院を替えさせる引き金となった。
治療代金230M$(約8,050円/保険無)のバカ高さに涙しそうになる。

●ジャパン・メディカル・クリニック
バンサー駅から徒歩約20分のところにある小さいが小綺麗なクリニック。
受付の女性スタッフ陣は中華系で美人。オーナーの趣向か、経営戦略の一部か。
受付のソファで診察を待つ間、女性スタッフ達に目をやりながら、
「ここなら毎日来てもいいかも♪」と浮かれるも、診断後、
「紹介状を書いてあげるからここの病院に行って、すぐに入院の手続きを取りなさい。」と
 言われ、幸せ気分から一気に地獄に落とされる。
俺が診てもらったドクターはインド系の女性医師。美人で優しい。
日本人の看護婦さん(おばちゃん) が通訳をしてくれ、
症状の出始めた頃、その時の環境等々を事細かく俺の代わりに英語で
ドクターに説明してくれる。
「お金はいいから、この手紙をもってすぐにここの病院に行きなさい。」と言う
インド系美人女性ドクターのご厚意により、治療費なんとタダ!!
受付の女性達と仲良くなる時間が持てなかったのが唯一の心残り。

●スバンジャヤ・メディカル・センター
K.L.セントラル駅から電車で約30分のスバンジャヤ駅からTAXIで約3分。
1000人余りの職員が働く大病院。佐藤さんという日本人女性スタッフの方がいる。
肝っ玉母さん系の佐藤さんのケア&ヘルプは的確かつ細やかで、
受付での書類作成のアドバイスから始まり、診察時のドクターとのやり取りの通訳、
入院費用がどれくらいかかるか、保険会社との連絡等々、すべてにおいて助けてくれた。
ちなみに日本人旅行者の入院費用は、デポジット(前払い)で2,500M$(約85,000円)。
俺の場合、入院用のベッドが空いていないのと(それでも佐藤さんが無理矢理空けて
くれるよう交渉してくれたが)、その入院費用の高さに及び腰100%になり、
ドクターからも「清潔なベッドのあるホテルに移れば良い。」という指示を改めてもらい、
放浪者には似つかわしくない"お湯の出るホテル"に泊まる事となった。
 この指示をくれたドクター。Dr.ヤップなる中華系の彼は皮膚科のスペシャリストで、
第一印象こそ「怖っ。ニコリともせん先生やなー。」なんて思ってしまったが、なんのなんの。
問診や診察を通して彼と話していくうちに、本当はすごく優しい人だという事に気づかされた。

 ここで少しだけ診察時の俺とDr.ヤップとのやり取りを・・・。
彼が服を全部脱げと言うので、パンツ一丁になった時のこと。
Dr.ヤップ「フムフム・・・。で、ペニスには斑点や水疱は出来ていないんだね?」
ツカサ  「Yes. I have no penis(はい。ペニスは持ってません。)」
佐藤さん 「まっ! それは病気より大変ね(笑)。」
Dr.ヤップ「たしかに・・・大変だな・・・。」(思いっきり真顔)
     −診察室にみょーな空気が流れる−
Dr.ヤップ「で、この日焼け跡は・・・。」
ツカサ  「けっこーイイ感じに焼けるでしょー?」
Dr.ヤップ「いや・・・、これはすでに日焼けを通り越して"火傷"だよ・・・。」(深刻そーな顔)
佐藤さん隣で爆笑。
Dr.ヤップ「日本人はどうして皮膚を焼きたがるのかね。クレイジーだよ。」(真面目に不思議がる顔)
結果、火傷の薬も出される事になる。

 肝心な病気の原因はというと、「不衛生な場所で寝泊まりしていて、虫に刺されたり噛まれたりした
その箇所からばい菌が入って二次感染したもので、水疱は体がばい菌と戦っている証拠。」
発症以来ずっと判らなかった病気の原因を教えてもらい、心から不安が消えた俺に、
彼はこれから処方する数種類の薬の使用法を丁寧に教えてくれた。

 初診から一週間経ち、2度目の診察が終わった時、Dr.ヤップから
「もう大丈夫。旅を続けても大丈夫だよ。でも、薬は忘れず飲む事。
 塗り薬も毎日かかさずにね。それと、宿はなるべく清潔なトコロを選ぶ事。」と、
 穏やかな笑顔で診察終了を告げられた時には、なんだかもう少し彼や佐藤さんと一緒に
居たい気持ちになり、複雑な気持ちになった。
Dr.ヤップに深々とお辞儀をして、佐藤さんと共に診察室を出た俺。
「なんだか、またここに来たいよーな気分です。なるべくなら二度と来ない方が
 いいんでしょーが・・・・。」と、彼女に言うと、
「これも旅の思い出ですものね。かといってまた来ちゃったりしたら大変よぉ。
 はい、後はこの書類を1階の会計に居る○○○っていう美人な娘に渡して、
 最後に薬局で薬を貰えばフィニッシュよ。こっちから会計には連絡してあるから大丈夫よ。
 "ハンサムなジャパニーズボーイが書類持っていくからヨロシク"ってね、ウフフ。
 それじゃぁ・・・良い旅をね♪」
 と、笑顔を返してくれた。

 こうしておよそ2週間に及ぶK.Lでの通院生活を終えて、まだ完治しない両手足ながらも
心の不安をすっかり取り除いた俺は、この2日後、再び旅を再会した。
"マレーシアで病気したらスバンジャヤの佐藤さん"と覚えておこう。
「保険はAIU。ここが一番便利よぉ。」コレも佐藤さんからのアドバイス。


いちおー、補足として説明しとくけど、英語が流ちょうな人は、
何も高い金払って"日本語の通じる病院"に行かなくても、K.Lの中心地にある
"クアラルンプール・ゼネラル・ホスピタル"でOKよ。治療費も激安だし。